研究概要
人生の三分の一を占める睡眠は、私たちにとって毎日欠かせない存在です。しかしいつも同じ眠りというわけではありません。私たちが感じる眠りの長さや深さ、寝つき、熟眠感はどのようにして生じるのでしょうか。健康増進や学力・運動能力を向上させるためにはどのような眠りが大切なのでしょうか。
当研究室では、睡眠中の生理機能(脳波, 脳画像, 心電図, 体温, 放熱, 概日リズム, 生理学的動脈硬化指標など)に関する研究を行っています. 特に温熱生理と睡眠、女性の睡眠(更年期,成熟期,閉経期,睡眠の性差)、特に更年期女性の不眠の病態生理と身体運動の効果、睡眠中の時間認知についての臨床応用の基盤となる基礎的研究,臨床的研究の両面からアプローチしています.
OUR RESEARCHES
研究キーワード Key words
睡眠, 脳波, 体温, 不眠症, 時間認知, 運動, 女性, 性差, 更年期, 動脈硬化
研究テーマ Research themes
- 身体運動と睡眠:身体運動が睡眠中の生理機能(放熱・体温・脳活動他)と認知機能に与える影響
- 女性の健康と睡眠、性差と睡眠:更年期・成熟期の不眠の病態生理と身体運動の効果検証 更年期女性の不眠と放熱異常に関する研究
- 睡眠中の時間感覚:睡眠状態誤認に関する生理学的研究
- 動脈硬化と睡眠:生理学的動脈硬化指標と睡眠の関連・性差に関する研究
- プレフレイルと睡眠
- 睡眠呼吸障害患者に生じる脚運動と心血管疾患・総死亡リスクに関する研究(国際共同研究)
- 新たな睡眠指針のための環境整備に関する研究(厚労科研共同研究)
- 乳幼児の発達と睡眠(共同研究)
- 地域包括に向けた高齢者の睡眠マネジメントに関する研究(共同研究)
更年期女性の不眠を改善する身体運動プロトコルの開発
成熟期女性の睡眠問題を改善する身体運動プロトコルの開発
OUR RESEARCH
TOPIC 睡眠中の時間認知と身体運動の放熱に着目した研究
私たちは「◯時間くらい眠ったかな」と睡眠中を通して時間の経過を感じることができます。一方で、一部の不眠症やうつ病では、自覚的な睡眠時間の評価に著しい異常が認められ(睡眠状態誤認)、その背景には深い睡眠の減少、認知機能の異常が関連している可能性が考えられています。 効率的な身体運動は深い睡眠を増加させる働きがあると報告されています。そこで深い睡眠を増やす効率的な身体運動法を確立するとともに、新たな評価法を導入することで、現代社会において誰もが抱え得る不眠の生理的メカニズムの解明とその改善に貢献したいと考えています。
Subjective sleep onset latency is influenced by sleep structure
and body heat loss in human subjects. J Sleep Res. 2024;e14122. https://doi.org/10.1111/jsr.14122
- 本研究ではヒトの主観的入眠潜時(寝付くまでの時間)の特性と体温・放熱、睡眠構造との関連を検討した。
- 健常者であっても被験者の多くが入眠潜時を実際よりも長めに見積もっていた(図A)。
- 主観的入眠潜時が短い人ほど、StageN2(安定した睡眠)が長く、入眠期における脳波のδ成分(遅い波の成分)が多く、消灯後の放熱量に比べ消灯前の放熱量が高かった(図B右)。
- 回帰分析の結果、主観的入眠潜時に有意に影響を与える要因として、消灯前後の放熱変化量の多さ、およびStageN2(安定した睡眠)が抽出された(図C)。
- これまでの先行研究は主観的睡眠時間に影響する因子に着目したものがほとんどであるあるが、本研究では主観的入眠潜時の特性、またその関連因子とりわけ放熱に着目した点が新しい点である。
Diurnal repeated exercise promotes slow-wave activity and fast-sigma power
during sleep with increase in body temperature: a human crossover trial. J Appl Physiol 127: 168–177, 2019.
中強度の有酸素運動条件で夜間睡眠中のSWSが有意に増加
中強度の有酸素運動条件でfast-sigma/SWA ratioが有意に増加
(Aritake et al., J applied Physiology, 2019)
中強度の有酸素運動条件で就寝1時間前および夜間睡眠中の
DPGが有意に上昇 (Aritake et al., J applied Physiology, 2019)